2005年11月17日

映画『親切なクムジャさん』(11/14)

「親切なクムジャさん」
原題「SYMPATHY FOR LADY VENGEANCE」/2005年韓国/114分

【監督】パク・チャヌク
【脚本】チョン・ソギョン/パク・チャヌク
【製作】イ・テホン/チョ・ヨンウク
【出演】イ・ヨンエ/チェ・ミンシク/クォン・イェヨン/キム・シフ/ユ・ジテ/ソン・ガンホ/シン・ハギュン

【あらすじ】
 サンタクロースの衣装を着た聖歌隊と伝道師が、"親切なクムジャさん"と呼ばれている女性を待っている。キョンジュ刑務所から出所した女たちは、待ち構えていた家族と抱き合ったり、「心を白くして二度と刑務所に戻らないように」豆腐を食べている。そんな中を、冬だというのに水玉のワンピース姿の女性が無表情で歩いてくる。
 イ・クムジャ。20歳のときに「ウォンモ君誘拐事件」の犯人として逮捕され、その美貌と残忍な手口により世間を騒然とさせた。13年の刑期を終えた彼女は、逮捕された時と同じワンピースを着て出てきたのだった。刑務所にいた時からクムジャを支援してきた伝道師が差し出した豆腐の皿を、彼女は片手でひっくり返し、「余計なお世話です」とぴしゃりと言って、立ち去っていく。
 刑務所の中で、クムジャは、他の囚人にいじめられた新入りの代わりに復讐を施したり、老いた元北朝鮮スパイの世話をして、この世の天使のように崇められ、"親切なクムジャさん"と呼ばれるようになったのだった。その顔からは光が放たれていたという。だが、出所した彼女からは、刑務所にいたときの聖母のような微笑みは消えていた。13年前から心に決めていた作戦を開始する時が来たのだ。

【感想】
 パク・チャヌク監督の『復讐三部作』完結編。
 復讐大好きなパク・チャヌク監督らしい、ヒドイ話でありました。タイトルからして、わざわざ「親切な」と銘打ってるだけあって、もちろん裏がありまくりです。
 前半のクムジャさんの刑務所内での『親切』については、出所してから実行する復讐の下準備だったわけですが(これはネタバレでも何でもなく、それを前提に物語は進んでいきます)、後半ある事実が発覚してからのクムジャさんの『親切』には驚愕しました。
 「ここに全員集めるのか!?」てな具合に。
 これを『親切』と呼ぶがどうかは大いに疑問ですが、正直ぞっとしましたね。

 あと色んな意味で笑えるシーンが多かったです。
 「インターネット殺人事件」でも「あの映画館の中で笑いをこらえるのに必死だったのは自分ひとりだけじゃなかろうか」と仰ってますが、私は結構映画館で笑ってました。何というか、コントのようなので本当に笑えるシーンと同時に、悲喜劇が入り交じっていてこりゃもう笑うしかないじゃんというシーンがいっぱいあったんですよね。
 中でも一番笑えるのは、何と言っても廊下で順番を待ってるシーンでしょう。
 特に『斧』のくだりは最高ですね。あと『靴』を心配するくだりとか。
 パク・チャヌク監督は、相変わらずこの手のシニカルな笑いが上手いよなぁ。
 ステキ。

 主演のイ・ヨンエは、「美貌の殺人犯」とされていたのですが、当初はちっともそう思えなかったです。出所したばかりのやさぐれ感が漂うところなど特に。ただ、事を為し終えた後の表情は、何とも美しかったです。「憑き物の取れた」というのが相応しい演技でした。
 そしてラストシーンの哀しくも美しいシーン。
 イ・ヨンエの演技は素晴らしかったです。
 ……まあ出所して最初に遺族への謝罪に赴き、包丁で小指を切り落とすのはどーかと思いましたが。その上、「10本行きたかったけど止められた」てのはどーよどーよ(笑)。

 気になるのは、シーン構成がちとトリッキーで分かりづらい事。あと前半と後半のトーンが違う事。
 後半というのは「全員集まった後」の事で、こちらがこの物語のメインと言えばメインでしょうか。ただ今まではクムジャさんの復讐を丹念に描いていただけに、後半はその印象が薄れてしまったような感じですね。
 前二作と違い、復讐者が男性と女性という違いも大きいのかなぁとも思ったり。


【総括】60点(ネタバレ注意!)

 若干期待はずれでした。
 いや、単に私の期待が大きかったというのもあるのですが、肩すかしを食らった感じなのですよ。
 前作「オールド・ボーイ」の脚本が素晴らしかっただけに(特に、最後のひっくり返し方の衝撃と言ったら!)、最後まで何かあるのではないかとドキドキしていたわけですが、結局それはなかったので、肩すかしを食らったと感じてしまった次第。
 (以後ネタバレに付き反転!)誘拐され死んだ「ウォンモ君」が幻で現れて、口を塞いだ時は「まさかこのまま……」とか想像して、かなりドキドキしましたね。もちろんそれは私の妄想だったわけですが、前作はそういう容赦のない叩き落とし方をしただけに、ついそう思ってしまったわけです。
 でも面白く観ました。とても酷い話だし(笑)。

 前作のイ・ウジンの既知外にはほど遠いものの、クムジャさんもなかなかなものです。
 遺族が自分を殺す相談を、犯人本人に対してスピーカで聞かせるなんて、常人は考えつかないです。どうやって殺すかを検討してるのを、身動き出来ないから耳を塞ぐ事も出来ずただ聞くだけなんて……いやぁ、笑った笑った。
 それでも色んな面で前作には遠く及ばないかと。
 特に「復讐の連鎖」「絶望への叩き落とし方」などが弱いなぁと。
 やっぱり『復讐三部作』の完結編なので、何かインパクトが欲しかっただけに、残念です。
posted by ミハイル暁 at 22:51| Comment(2) | TrackBack(2) | 映画 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
凄く怖かったけど、クスリと笑えるところもあったよね、ちょっと情報過多で解りにくいところもあったわ。
Posted by あん at 2005年11月18日 15:31
 私も見たのでTBさせていただきます。
 今回もせつないです。ハサミのシーンなんか特に。あと、見終わって暫くしてからも、気がつくと思索してしまいます。赤いアイシャドウの意味とか。
Posted by TARGET at 2005年11月29日 01:31
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『親切なクムジャさん』
Excerpt: 『親切なクムジャさん』は東京国際映画祭のおりに見たかったのですが、イ・ヨンエの
Weblog: しのわずり
Tracked: 2005-11-24 20:53

『親切なクムジャさん』を見る
Excerpt: 【あらすじ】 サンタクロースの衣装を着た聖歌隊と伝道師が「親切なクムジャさん」と呼ばれている女性を待っている。刑務所から出所した女たちは、待ち構えていた家族と抱き合ったり、(心を白くして二度と刑務所..
Weblog: 葎座雑記
Tracked: 2005-11-29 01:23