2010年09月05日

白河三兎「プールの底で眠る」★★★1/2


白河三兎「プールの底で眠る」★★★1/2
【先を読みたくなる物語で面白かったが、肩透かしなラストがしっくりこない】
「そんな思い出は捨てて、これから新しい思い出を作っていこうよ。ずっとずっと。いっぱい作っていけば、古い思い出はペチャンコになっちゃうんだから、大丈夫だよ」
 思い出は蟻のように簡単に踏みつぶせるものではない。確かに記憶は薄れていく。でも薄まる毎にその喪失感は深まっていく。思い出が色褪せていくことに哀しみを覚える。蟻とは違う。蟻を踏んづけたくらいでは誰の心も痛まない。

 読後感は悪くない。いや、むしろ清清しいし、してやられた感もある。
 ただかなり好みが分かれるだろうことは想像に難くない。思わせぶりっぷりがヒドイのだ。
 物語は、留置所にいる主人公は罪を犯したらしい。それは13年前、セミと呼ばれる少女との恋に関係するらしい。しかし、セミはすでにいないらしい。それは全てセミとの7日間のことに何かがあるらしい。
 読み進めても、この調子で「らしい」ばかりなのだ。
 思わせぶりにもほどがある。そこにはかすかに死の匂いがあり、それが独特のトーンで語られるので、ついつい引き込まれてしまう。結局、現在の主人公は何をしたのか、過去セミと何があったのか、早く知りたいと思い、ページをめくるという次第だ。
 ただ読み終わった時に感じるのは、大山鳴動してねずみ一匹、という言葉ではないだろうか。腑にも落ちたり、納得も出来る。それに上手い物語だったと思う。
 でもどうしても肩透かしな感じは否めない。そこがどうしても気になる。
 面白かったし、読み進ませる力もある小説だけど、手放しで誉めることが出来ない、そんな微妙な言い方になってしまう小説かと。


posted by ミハイル暁 at 22:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説&漫画 | 更新情報をチェックする
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