2009年08月08日

映画『チェイサー』(2009/04/16)

『チェイサー』
原題「THE CHASER」/2008年韓国/125分

【監督】ナ・ホンジン
【脚本】ナ・ホンジン
【出演】キム・ユンソク/ハ・ジョンウ/ソ・ヨンヒ/チョン・インギ/パク・ヒョジュ/キム・ユジョン

【あらすじ】
 デリヘルを経営している元刑事のジュンホ(キム・ユンソク)は、店の女の子たちが相次いで失踪する事態に見舞われていた。やがて最後に会ったと思われる客の電話番号が同じ事に気づくジュンホ。そして、その番号は直前に送り出したデリヘル嬢ミジン(ソ・ヨンヒ)の客とも一致していた。
 ほどなくミジンとの連絡が取れなくなり、心配したジュンホはミジンの行方を追う。すると、通りで不審な男ヨンミン(ハ・ジョンウ)と遭遇する。そして、男が問題の電話番号の持ち主であることを突き止めたジュンホは、格闘の末に男を捕縛、2人はそのまま駆けつけた警官に連行されていくのだが。

【評価】80点

【感想】
 2時間の上映時間の間、画面に釘付けにさせる迫力を持った映画。
 とにかくスピード感が凄い。
 チェイサーというタイトルに偽りなく、逃げる者と追う者、片方はするりとかわすように上手く逃げ、もう片方はひたすら走り続け、執拗に追いかける物語である。
 夜の韓国で舞台であることも相まって、追う者の焦燥感が画面から滲み出ているようだ。

 主演二人の存在感が圧倒的だ。
 主人公ジュンホは、善人ではない。元刑事のデリヘルの経営者。女性の扱いは粗雑で、すぐかっとなり、手も早い。それだけにリアリティがある、このジュンホをキム・ユンソクは見事に演じている。後半、ジュンホの焦りや絶望、そしてどうしようもない怒りが痛いほど伝わってくる。
 殺人鬼のヨンミンを演じたハ・ジョンウの演技は輪をかけてすごい。とにかく怖い。何故なら、普通に見えるからだ。愛想よくしていれば、どこにでもいる平凡な隣人にしか見えない。そんな平凡な隣人が、一瞬にして殺人鬼に変わる。このギャップが素晴らしい。時折見せる、明らかに常軌を逸した目の演技も怖かった。
 監督だけでなく、この二人も、韓国で数々の賞を取ったのも納得だ。

【総括】
 後半の展開はかなり衝撃的だ。
 観客に希望を持たせて、それを奪い取るやり口は絶妙という他ない。この付近の演出は際立っていて、特に最後の留守番電話を聞くシーンなど、ジュンホの絶望感が画面から滲み出てくるようだ。
 この後味の悪さ故、好き嫌いが分かれるところだと思うが、意表を突かれた事もあり、私は正直に凄いと思った。
 また登場人物に感情移入しづらいのも確かだ。
 殺人鬼のヨンミンは論外として、ジュンホは冷徹で、他人を道具のように扱い、すぐかっとなって暴力を振るう。そもそも事件に関わったのはあくまで利己的な理由の為だ。だから前半、必死になって追いかけるジュンホを応援する気にはならない。
 そこに、いなくなった女性ミジンの子供キム・ウンジと共に追いかける事により、ジュンホは徐々に変わっていく。ここで特筆すべきは、その変化が露骨ではないことだ。あくまで自然だ。だからこそ、後半の展開にリアリティが出てくる。
 事情を悟り、車中で泣き出すウンジと、焦るように電話をかけるジュンホ、台詞もなく、BGMもない画面だけのシーンが、とても印象的だ。

 話としての好みはあると思うが、やはり凄い作品だと思う。
 ナ・ホンジン監督、これが初長編監督作というのだから、これからも注目すべきだろう。
posted by ミハイル暁 at 11:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | 更新情報をチェックする
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